『けものフレンズ2』 雑感 

けものフレンズ2』雑感

-はじめに

 『けものフレンズ2』は意図していたのか、そうでないのかはともかく「野心作」ではありました。

 1期(無印)の作風がたつき監督の個性(及びそれを支えるヤオヨロズの制作体制)あってのものだったにも拘らず、いろいろな事情で制作陣の変更が必要となった時点で、2期を成功させることはかなりの難行事となってしまいました。成功が難しいなら、せめて傷を最小限に抑えようとするのが人情というもの。2期がひたすら無難なつくりになっても、誰も責めなかったでしょう(たぶん)。

 けれど2期の制作陣は果敢に攻めました。1期が12話かけて表現したテーマや価値観やキャラ同士の関係性etc..を継承せず、それへのオルタナティブを掲げて、1期としっかり向き合ったわけです。何故そんな冒険に出たのか。監督や原作者の純粋にクリエイターとしての希望が貫徹されたのか、それともIP展開戦略に絡む幾多の制約からやむなくこういう形になったのか。真相はともかく、制作陣を変えた上、リスクを取って冒険した結果得たものと失ったものとがあるわけですから、(比較すれば失ったもののほうがはるかに多い気がしますが...)、ここは前向きに得たものを拾っておきたいと思って、この記事を書きました。

 

...と大上段に構えてしまいましたが、白状すると、6話のくたびれたOLみたいなかばんさんにくらっときてしまったので、せめてそこだけは褒めておきたい、という極私的な動機で書いているだけです。

 

ー青春アニメとしての『けものフレンズ2』

 2期6話のかばんさんに惹かれるのは、そこに青春映画や青春小説で描かれる「過ぎ去った青春を苦味とともに回顧する」タイプの感傷を感じられるからです。

 2期で描かれる時代(1期からどれほど経過したのかは不明ですが)においては、1期(無印)の頃には確かに存在したかばんとサーバル二人の互いに対等で相手への敬意に満ちた理想的な関係性はいつの間にか失われています(もっといえばかばんと「ボス」、かばんと「その他のフレンズ」との『一対一』で『対等な』関係性も失われている)。

 そしてその関係性がなぜ失われたのかの理由が明かされないままかばんとサーバルの再会は(サーバルは再会とは認識していませんが...)終わる。1期の主人公とその相棒を破局させた上、その理由すら開示しないというのは、なかなかにアクロバットな作劇です。

 ですがその結果として、1期(無印)からの視聴者は『かつて同じクラスで一番の人気者だった同級生に何年かぶりに再会したが、往年の輝きをすっかり失って、日々の生活に埋もれている』のを観たかのような気持ちになります。なぜ輝きを失ったのか、これまでの間に一体何があったのか、自分には分からない。今更聞きだすつもりもない。心をよぎるのは、確かにあの頃の彼(彼女)は輝いていた..という甘美な記憶と、その輝きは永続しなかった、やっぱり刹那の輝きだったんだ、あんな輝きやっぱり続くはずないよな...という納得と一抹の失望が入り混じった感傷。これです。この感傷によって、2期6話が青春アニメとして立ち上がってくる。

 2期6話はまず表層的には、かばんさんがサーバルと再会し、再び別れる、その邂逅のなかでかばんさんがサーバルに向ける感情にこそ、青春アニメ的な感傷が埋め込まれているのですが、上述のように、そんなかばんさんを観る視聴者がかばんさんに抱く感情にも、同様の感傷が含まれるという二重構造になっています(十中八九まぐれだと思いますが...)。

 2期6話のかばんさんは、「最も輝いていた時代を通過してしまった人」として、長いエピローグを送っている人として、やたらとリアリティがありました。ああ、こうやって、淡々と日常を送っているんだなぁ...、このまま平穏に研究所で生活して、淡々と歳を取り、淡々と老いていくんだ.. そういう意味でのリアリティがありました。引退した元英雄感というか。そんな元英雄のもとにかつての親友が偶然やってくる。かつて自分の親友だった彼女は今は別の仲間と楽しく旅をしており、自分のことを全く覚えていないと思っていたが、どうやら僅かながら記憶を残しているようだ。親友と別れる間際、それに気づいて、少しだけ明るい気持ちになる。明日からまた頑張ろう...

 2期6話最終盤のかばんさんのサーバルたちを見送った後の一連の所作には、サーバルと旅をしたあの輝かしい日々を惜しみつつも、過去を振り切って、現在を生きようという前向きさが感じられて、何度見てもよい。

 

ー終わりに

 上記のとおり、けものフレンズ2期6話は意図せざる結果として、上質な青春アニメと同様の感傷を手に入れた。1期(無印)の主人公のバディを破局させるという(恐らくは制作初期の段階で決定されていたであろう)大方針から、いくつもの偶然と多くの人の努力を経てたどり着いた輝き。

 けものフレンズ2全体の評価としては、どうしても残念な結果になってしまいますが(時間が無かったのでしょう。明らかに脚本が練れてないと思います)、こういう特殊な制作事情でもなければ実現しなかったであろうシーンもありますから、そういったところを拾って少しでも楽しんでいけたら良いですね。